2015-09-08

地下鉄の風景・・虎ノ門あたり

虎ノ門あたりだった。杉本は疲れた顔をしていた。半分眠っていた。僕は声もかけられなかった。普通なら必ず声をかけたはずなのに、だ。そしてそれが僕が東京で杉本を見た最後になった。まもなく彼女は東京を離れることになったからだ。彼女がおそらく一番美しかった。僕の知っている少女達の中で一番美しかった。いいかげんな僕に一番は何人もいるけれど、あの時は、少なくとも数年間はそう思っていた。つまり北野さんのことをしばらく忘れていた時期だったからだ。杉本は「杉本」であり杉本さんでも裕紀でもない。杉本・・なのだった。今でも・・だ。


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